Webサービスやアプリがめざす最初の大きな目標は、Product/Market Fitに到達することです。つまり市場に受け入れられるプロダクトをつくることです。そのために、ユーザインタビューによる仮説検証などを地道に行なっていくことになります。
では、このPMFを達成したかどうかはどうやって判断すればいいのでしょうか。その方法のひとつがProduct/Market Fit Surveyです。この記事ではPMFとはなにか、必要性ややり方について書いていきます。
Product/Market Fit Surveyとは、PMFを定量的に判断するための調査のことをいいます。シーン・エリス氏によって提唱されました。
PMF Surveyのテスト方法はいたってシンプルで、ユーザに「プロダクトが使えなくなったらどう思いますか?」と聞きます。4つの選択肢のうち 「とても残念に思う」と答えたユーザが全体の40%以上であればPMFを達成したといえる 、ということになります。
この40%という数字は、数百のスタートアップの結果を比較することで決定されました。
ここでひとつProduct/Market Fit Surveyの例を見てみます。
2015年に、ハイテン・シャー氏はSlackに関するPMF Surveyを行いました。731人のユーザに「Slackが使えなくなったらどう思いますか?」と聞いたところ、51%のユーザが「とても残念に思う」と答えました。つまり、この時点でSlackはPMFを達成していたといえます。
Product/Market Fit Surveyは、PMFの達成を判断する材料にするために行います。
プロダクトをつくりはじめるとき、最初にめざす大きな目標がPMFです。PMFを達成することで、プロダクトに対する投資効率を最大化できます。逆にいうと、PMFにいたっていない段階での投資は、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものです。
プロダクトはPMFを達成する必要があり、PMF Surveyはこの達成を判断するために重要な指標である、ということになります。
そもそも、なぜProduct/Market Fit Surveyがよいのでしょうか。PMFを判断するためのテストは、PMF Survey以外にもNPS (Net Promoter Score)などがあります。
PMF Surveyの優れている点は、ユーザに対して調査がしやすく、結果もわかりやすいというところにあります。また、結果をもとにした改善につなげやすいという利点もあります。このことについては、次章で書いていきます。
では、Product/Market Fit Surveyの具体的なやり方について書いていきます。どうやるか、誰に対して実施するか、いつやるか、調査結果をどう扱うかについて、それぞれ示します。
Product/Market Fit Surveyはとてもシンプルな調査です。ユーザに「プロダクトが使えなくなったらどう思いますか?」と聞きます。これに対して、次の4つの選択肢を設けます。
このアンケートは、たとえば画面の右下にメッセージを表示し、クリックするとフォームが表示される、といった形で配置するとよいでしょう。回答までのアクション数をできるだけ少なくすることで、回答数をふやすことができます。
また、『今後表示しない』といったオプションがあると、ユーザにとって親切な設計であるといえます。
PMF Surveyをメールで行うやり方もありますが、『メールを使っているユーザ属性』というバイアスがかかってしまいます。プロダクト上で実施する方がよいでしょう。
Product/Market Fit Surveyの提唱者・シーン・エリス氏によると、次に該当するユーザに対して実施するとよいとされています。
Product/Market Fit Surveyは、基本的にいつでも実施することができます。ただ、信頼のある結果を得るためにはある程度の回答数が必要になります。一方で、同じユーザに何度も聞くのも体験としてよくありません。ひとりのユーザにつき、せいぜい年に数回程度の回答を求めるようにします。
これをふまえ、ある程度ユーザ数がふえてから実施するとよいでしょう。
ユーザ数の少ない初期のころはユーザインタビューを重点的に行い、後のPMF Surveyにそなえてプロダクトの改善に力を入れていきましょう。
PMF Surveyは、PMF達成まで継続的に実施します。達成後も定期的に実施することで、ユーザを失望させていないかを見ることができます。
Product/Market Fit Surveyの結果は、集計し、月次でパーセントを確認できるようにします。毎月確認し、40%を超えるようプロダクトを改善していきます。
このときに見るポイントは、アンケートに『すこし残念に思う』と回答したユーザです。このユーザは『とても残念に思う』と答えるのにもっとも近いユーザです。このユーザに対して改善を行うことで、スコアをよくすることができます。
たとえば『すこし残念に思う』と回答したユーザに対してインタビューを行い、ユーザが抱えている課題や課題をどう解決しているか、改善点などを聞きます。この繰り返しがPMF達成につながっていきます。
ただ、数字だけを見てはいけません。ユーザの声をそのまま機能につなげてしまうと、今満足しているユーザが離れてしまうかもしれません。追加する機能についてはしっかり判断するようにします。これについては別の記事で詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
ここまで書いてきましたが、Product/Market Fit Surveyの結果だけではPMFの達成は判断できません。
PMFとはプロダクトが市場に受け入れられた状態のことをいいます。つまり事業として持続可能でないといけません。PMF Surveyはユーザに受け入れられたことは示ますが、収益面で持続可能かどうかまではいえません。
収益面に関する持続可能性は、ユニットエコノミクスによって判断します。これは別の記事で書いているのでご覧ください。
また、PMF Surveyはアンケートであるため主観的なものになります。テストの対象によっても結果が変わります。客観的に、ユーザの実際の行動をもとにPMF達成を判断する必要もあります。
一般的にはユーザの継続率を見るとよいとされています。これについては顧客ライフサイクルの中で判断できます。これについても別の記事を書いているのでご覧ください。
プロダクトをつくりはじめたときにまずめざす大きな目標がProduct/Market Fitへの到達です。この達成を判断する指標にPMF Surveyがあります。
PMF Surveyはユーザに対して「プロダクトが使えなくなったらどう思いますか?」と聞き、「とても残念に思う」と答えたユーザが40%を超えたらPMFを達成したといえることになります。
PMF Surveyとあわせてユニットエコノミクスや継続率を見ることで、PMFに到達したかどうかを判断することができます。
Webエンジニア&プロダクトマネージャ。 スタートアップ創業→上場企業など5社で20以上のプロダクトをリリース。 共著に『現場で使えるRuby on Rails 5』。
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